なまえさんは不思議な音がする。
少し今まで聞いたことがないような。
もちろん、綺麗で、優しくてそりゃあもう!素敵すぎるんだけど!
確か、3つ年上って言ってたっけ。関係ないね!うん!!



そんなことを考えていると、ちょうどなまえさんが前を歩いていた。
しかも、めっちゃ重そうな荷物を2つも持っている。
誰だよ!女性にあんなの持たせるヤツは!!

「なまえさんっ!!!」
「あ、善逸くん」
「それ持ちます!重いですよね!重いですよね!?」
「いや、大丈夫だよ。善逸くん、怪我治ったばっかりじゃない。それにこんなの毎日持ってるし」
「毎日ぃぃぃ!?」

折れるよ!折れますよなまえさんのそのほっそい腕がぁぁぁぁ!!!

「えぇ?じゃ、じゃあ1つ持ってもらおうかな・・・」

おそらく心の声が顔に出ていたのか、なまえさんが荷物を1つ差し出して、にこりと笑った。可愛い!可愛すぎる!もう女神!!

「もちろん!何なら2つとも!」
「いや、私の仕事なくなっちゃうよ」



そんな話をしながら廊下を歩く。なまえさんと2人で、歩いている。いやもう幸せすぎて死ぬんじゃないかな俺!?
ふと、なまえさんが角の所で足を止めた。何だろう?と同じく足を止めると、曲がったところから話し声が聞こえてきた。なんか、嫌な感じの音がする。





「なぁ、みょうじさんって知ってるか?」
「あーあの綺麗な人な」

話しているのは2人の隊士で、なまえさんの話をしている。
ここで何事もなく、角を曲がって挨拶して通り過ぎれば良かったのかもしれないが、なまえさんがそれをしなかった。
なので一緒にその2人の会話に耳を傾けざるを得なかった。

「なんか聞いた話なんだけど、あの人、この世界の人間じゃないらしいぜ」

片方の隊士から発せられた一言は、衝撃的なものだった。
え、なにそれ?

「はあ?なんだよそれ」
「違う世界から来たって、そう言ってるらしい」

えぇぇぇぇぇぇ!?なにそれ!?何言っちゃってんのこの人たち!?

慌ててなまえさんを見たけど、特に表情は変えずに、じっと話を聞いている。
でも悲しいような、何かを我慢しているような、ざわざわとした音がしている。

「そんな話あんの?嘘くさいよなぁ」
「でも柱もみんな知ってて、隊内では周知の話らしい」
「って言ってもなぁ。はいそうですかって信じられるか?」
「だよなぁ。ちょっと気味悪いよな」

んなっ!?こいつらなまえさんに対して何言っちゃってんの!?
たまらず割って入ろうとすると、なまえさんがそれを手で制して前へ出た。
その表情は、穏やかで、凛としていた。









「私の話をしてくれるのは嬉しいんだけど」

突然現れたなまえさんを見た2人は、あからさまに「ヤバい!」という顔していた。

「私のことは柱の皆さんも、ここの人たちも知っているし、一応、公認を頂いてるの。もちろん、全員が信じてるわけじゃないと思うし、無理に信じなくても良いと思う。それは任せるよ。でも、こういう話は、もっと人がいない場所でお願いね?」

なまえさんが優しく諭すと、2人は一言、すみません、と残してあっさり去っていった。ざまぁみろ。



それにしても、今の話は何だったのか。もちろん、なまえさんが嘘をついているなんて微塵も思ってないけど。







なまえさんは、ふーっとため息を吐いて、申し訳なさそうにこちらを見た。そして、

「今の話は、本当」

しっかりとした口調で、そう言った。